詩 『畏怖と憧憬』
これは、子どもの頃、親の仕事の都合で数年を過ごした離島での経験です。
『畏怖と憧憬』
海に呑まれてしまったら
わたしはどうなっていたんだろう
あのとき
子どもの頃を思い出す
外海に突き出す岩山のような島
海は泳ぐための海じゃなかった
船が行き交う海だった
一歩岸を離れると
びっくりするほど深くなって
そのままずっと
先が見えない深海に続いていった
ゴーグルを通してはっきり見えた海の中は
ただひたすら青かった
心の底から湧いてくる恐怖
浮き輪から手を離したら
そのまま沈んでいくんだ
潮に流されながら
必死にしがみついた
今も必死にすがっている
落ちないように
呑まれないように
深い海への畏怖と憧憬
白い小粒だけが救ってくれる