双極の波は あヲの波 創作とか診療日記とか

吐き出せない思いで窒息しないために

エッセイ 『カミングアウト or not』

わたしは、病気のことを周囲にカミングアウトしていない。

隠しているというより、

そのタイミングを失しているというのが実のところだ。

 

躁状態にあるときは、自分が病気であるという認識はないから、

うつ状態のときに、初めて病院にかかる。

あるいは、周囲の人がおかしいと気づいて

病院に連れて行くのも、うつ状態のときだと思う。

 

でも、そもそも、わたしはいつから病気だったのだろう?

 

自分の中でも、それが判然としない。

あの時期は、やたら元気だったなぁとか

思い当たることはもちろんあるが、

やはり、うつ状態が酷くなって、

起きられなくなって、

会社を辞めたことが、

自分で「病気なんだ」と意識する大きなきっかけになった。

 

それでも、診断は「うつ病」だったので、

もっと複雑な気分障害だと理解するまでには、

長い時間がかかった。

 

最初の主治医は、

「3か月ごとに気分の上下がある。

それを暴れ馬のように、乗りこなせ」と言った。

 

それ以降、2度の転居や、

主治医の異動などを経て、

今、5人目の主治医と治療に臨んでいる。

 

その間、自分では、「元気になった」と思った躁状態の時期もあって、

そのたびに、周りに迷惑をかけてしまったように思う。

 

フリーランスで仕事をしている為、

仕事関係では、「わたし、双極性障害なんです」とも言えず、

家族もうつ病だと思っている。

 

躁状態で、「やります」と言ったことが出来なかったり、

迷惑をかけたことを、「あの時は申し訳なかったです」と

どうやって伝えればいいのだろう?

 

今は、中間地点で、小刻みに気分が上下に揺れる状態にある。

 

うつ状態は、自分だけが苦しめば済むが、

躁状態は、周りを巻き込むから、

そっちの方が自分でも厄介だと思うし、

後悔することが多い。

一般的に、元気で、明るいのが躁状態だと思われているが、

わたしは、怒りっぽくなったり、

自分の思うようにならないと、すぐ不機嫌になったりする。

だから、周りには迷惑なのだ。

うつ状態だとは、そんなエネルギーはない。

 

なので、元気になっていくことも、

「また、躁状態では?」と疑ってかかる癖がついてしまい、

こんなわたしが、人に受け入れられるはずがないと思ってしまう。

 

それで、だれにも言い出せないでいる。

 

ありのままで。

それが、どんなに難しいか。

それを、人に言えたら、どんなに気持ちが楽になるか。

 

そう思って、こうやってインターネットの海でそっと告白してみた。